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風に乗る僧侶。 2012.07.20更新
チベットの古都、ラサに旅したときのお話。大学時代の友人と2人で行ったのですが、ダライ・ラマ政権時代のポタラ宮を拝謁しに行こうと言うのが、主立った目的だったと思います。ラサは吐蕃時代の7世紀に成立したチベットの都で、1640年代から300年間にわたって、その本拠地が政治の中枢となり、また政権の変遷をこえて文化的中枢であり続けたようです。また、チベット・モンゴル・満州などの多民族から構成されるチベット仏教文化圏の中枢でもあります。
さて、そんな素敵な地で一貫して覚えていることは、
①鼻出血が止まらない
②頭痛が治まらない
(四六時中のひどい頭痛と、嘔気で夜中に何度も眼が覚める)
ということが一番でしょう…(笑)
要は、高地に身体が順応しないままの旅でした。海抜はなんと約3700mの高地にある環状巡礼路。クライマーでもない日本人が訪れると8割方の人はそうなるそうですが、気候は晴れていることが多く、湿気も少ないため、そう言った意味では快適でした。
ラサには、ポタラ宮を匿うように大小幾つもの寺院が点在していて、朝になると僧侶達が寺院の中庭で一斉に禅問答を始めます。僧侶は二人一組の対になって座り、日本でいうなれば、和尚さんが“喝”をいうような勢いでお互いに問答を繰り返していきます。僧侶とは言え、歳の頃なら中高生くらいでしょうか。まだ幼さと痘痕も残る男の子達が殆どです。決して裕福ではないチベット。彼らは、若くして仏道に入る事こそが最大の親孝行であり、国を支えていく事だと言います。
歯切れのいい、そんな喝が20分も目の前で繰り返されていると、いよいよ私も気になってきます。
“一体、なんて言っているんだろう?”
如何せん、言語はチベット属語、増してや仏教のお話。私に理解出来る筈もありません。そこで、現地の物売りらしき人を捕まえて、どんな問答をしているのかと、是非に通訳をお願いしてみました。その人は、何人かの問答を暫く聞き入った後、くるりと私の方へ顔を向けて『僧侶が風に乗るのか、風が僧侶を乗せるのか?』と言った内容のことを問答していると教えてくれました。
う〜ん…日本語で聞いても難しい(笑) でも、何か深い言葉です。今になってふと考えても、その意味ははっきりと分からず仕舞いのままなのですが、それがとても印象に残っています。
果たしてあの若く逞しい僧侶達は、いま風に乗れたのでしょうか…その心の平穏を願いつつ、追憶に耽る夏のこの頃です。

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